千葉県北東部に位置し、九十九里浜の豊かな海と広大な農地に恵まれた旭市。全国屈指の「食の郷」として知られる同市は、2025年度に市制施行20周年の大きな節目を迎えました。
旭市では古くから「ごみ減量化と3R推進のまち」を宣言し、市民と共に環境保全に取り組んできましたが、近年、まだ使える品々が「粗大ごみ」として廃棄される現状に課題を抱えていました。特に高齢化が進む中で、大型家具の運び出しが困難な市民にとって、リユースは「やりたくてもできない」高いハードルとなっていたのです。
こうした物理的な課題を解決し、環境負荷の低減と市民サービスの向上を同時に実現するため、旭市は2026年、リユースプラットフォーム「おいくら」との連携を開始しました。豊かな自然を次世代へ引き継ぐため、リユースを「特別なこと」から「当たり前のライフスタイル」へ。米本市長が描く、食の郷・旭市の持続可能な未来像についてお話を伺いました。
- 令和3年7月31日千葉県旭市長に就任。
これまで旭市議会議員を2期務め、同文教福祉常任委員会委員長や旭市陸上競技協会会長、旭警察署少年警察ボランティア連絡会会長などを歴任。
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課題は「理解不足」ではなく「手段の不足」。市民の利便性と安心を追求した、旭市のリユース転換戦略

――旭市は「ごみ減量化と3R推進のまち宣言」をされていますが、今回「おいくら」との連携に踏み切った最大の決め手は何だったのでしょうか?
最大の決め手は、市民の皆様が置かれている「多様な状況やニーズに、柔軟に対応できる点」です。
クリーンセンターの現場を見ますと、まだ十分に使える家具や家電が粗大ごみとして運び込まれており、「これを何とかリユースにつなげられないか」と常に考えていました。
一方で、高齢化が進む中、大型の家具を処分したくても「重くて運べない」「車がない」といった事情で、リユースを諦めてしまう方もいらっしゃいます。
「おいくら」であれば、出張買取など、市民一人ひとりの事情に合わせた選択肢を提示できます。この「かゆい所に手が届く」仕組みこそが、ごみ減量を前進させるために不可欠だと判断し、連携を決断いたしました。
――多くの自治体がごみの削減に対する取り組みを実施していますが、思うような成果は見られないという現状があります。ごみ減量の妨げになっている具体的な課題があれば教えてください。
課題の本質は、リユースという言葉の理解不足ではなく、「具体的に何をすれば良いか明確になっていない」ことにあると考えています。
「リユースが良いこと」は頭では分かっていても、いざ大掃除や引っ越しといった必要なタイミングで、適切な情報が届いていないのが現状です。また、見知らぬ業者を利用することへの不安など、「安心材料」が足りていないこともハードルになっています。
その結果、市民の皆様にとっては、慣れ親しんだ「分別・リサイクル」の次に、「リユース」という選択肢が選ばれにくくなっています。
目に見えるメリットや「やる理由」が十分に伝わっていないため、認知はしていても実際の行動には結びつかない。ここが、ごみ減量を阻む大きな壁だと認識しています。
市民の「地元愛」をごみ減量の力に。日本屈指の農業地帯を守るための、持続可能なごみ処理のあり方
――旭市ではこれまで、生ごみ処理機の補助や資源回収の促進など、市民と共に一歩ずつ進んできました。これまでの歩みを振り返り、市民の「分別の質」や「意識」をどう評価されていますか?
日頃より熱心に取り組んでくださっている市民の皆様には、心より感謝しております。皆様には非常に高い意識でご協力いただいており、その姿にはいつも励まされています。
ただ、市全体として見ますと、分別の質や意識については、まだ十分に高い水準にあるとは言い切れず、成長の余地があると感じています。
だからこそ、今回の「おいくら」のような新しい取り組みが、改めてごみ問題に関心を持つきっかけになればと考えています。旭市は地元愛にあふれた方が多いので、旭市のためにこれから意識を変え、行動を定着させていけると信じています。
――旭市は「食の郷」として、豊かな土壌と海に恵まれています。この美しい自然を次世代へ引き継ぐために、市長が考える「理想のごみ排出の姿」とはどのようなものでしょうか?
私が考える理想の姿は、「環境への負荷を最小限に抑え、自然と共生する循環型社会」です。
旭市は、全国でもトップクラスの農業産出額を誇る、日本屈指の「食の郷」です。この豊かな農水産物は、健全な土壌と海があってこそ成り立ちます。
だからこそ、私たちにはこの環境を守る大きな責任があります。必要なものが大切に使われ続け、廃棄されるものが極限まで減る。そうした持続可能なごみ処理のあり方が、この地域の自然、ひいては日本の食卓を守ることにつながると考えています。
「ごみ減量は未来への投資」。脱炭素への貢献と、リユースが当たり前になる10年後の旭市

――「おいくら」の導入によって、これまで「ごみ」として処理費用をかけていたものが「価値ある品物」に変わります。これが市の財政や環境負荷にどのようなインパクトを与えると期待していますか?
財政面での処理コスト削減はもちろんですが、それ以上に「脱炭素」と「資源保護」という観点でのインパクトを重視しています。
焼却量を減らすことは、CO2排出量の削減に直結し、地球温暖化防止への具体的な貢献となります。また、既存の製品を長く使い続けることは、限りある資源の消費を抑えることにもつながります。「ごみを減らすことが、地域の環境や資源を守るための投資になる」という認識を、市民の皆様と共有していきたいですね。
――市制20周年という節目に、リユースという新しい文化を根付かせようとされています。10年後の旭市が、どのような「循環型社会」になっていてほしいですか?
10年後の旭市では、不用品が出た際に「まずはリユースを検討する」ということが、特別なことではなく、市民生活における「必須のライフスタイル」として定着していてほしいと願っています。
物が大切に循環し、ごみとして出されるものが最小限に抑えられている。そうした落ち着いた暮らしが根付くことで、旭市がより住みやすく、持続可能なまちとして発展している未来を描いています。
「おいくら」を賢く使い、共にごみ減量を。旭市の未来を守るために、今日から始めるリユースの輪
――最後にごみの減量は、市民一人ひとりの「これ、まだ使えるかな?」という小さな気づきから始まります。市長から市民の皆様へ、熱いメッセージをお願いします。
市民の皆様には、日頃より市政への多大なるご協力をいただき、厚く御礼申し上げます。
私たちが暮らす旭市の豊かな自然環境を次世代へ引き継ぐためには、皆様お一人おひとりのご協力が不可欠です。不用品を手放す際には、「これはまだ誰かの役に立つかもしれない」と、一度考えてみていただければ幸いです。
「おいくら」という新しい仕組みを活用し、私たちと一緒に、できることからリユースに取り組んでいきましょう。
旭市の未来を守るため、引き続きのご理解とご協力を、よろしくお願い申し上げます。
まとめ
今回のインタビューを通じて、米本市長が語るリユース施策は、単なる廃棄物処理の効率化ではなく、旭市のアイデンティティである「豊かな食と自然」を守るための聖域なき挑戦であることが強く伝わってきました。
「おいくら」という民間の力を活用することで、これまで「重くて運べない」「捨て方がわからない」と諦めていた市民に、新しい「手放し方」という選択肢が提供されます。それは、市民の利便性を高めるだけでなく、焼却によるCO2排出を抑え、限りある資源を大切にするという、極めて具体的な環境アクションへと繋がっています。
「これはまだ誰かの役に立つかもしれない」という一人ひとりの気づきを、街全体の文化へと育てていく旭市の歩み。市制20周年を機に動き出したこの取り組みは、全国の自治体が直面する「ごみ減量の壁」を打ち破る、一つの希望となるに違いありません。