【蟹江町長インタビュー】「川」のように価値を次の世代へ運ぶ。水郷のまちが挑む、リユース主導の循環型社会

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最終更新日:2026/07/01

愛知県蟹江町は、古くから豊かな河川と共に歩んできた「水郷のまち」です。町民の高い意識により総ごみ排出量は減少傾向にある一方、深刻な課題となっていたのが「粗大ごみ」の多さでした。その中にはまだ使用可能な品が多く含まれており、特に高齢者世帯からは「家の中から運び出せない」という切実な声も上がっていました。

こうした現場の課題を解決し、持続可能なまちづくりを加速させるため、蟹江町はリユースプラットフォーム「おいくら」との連携を開始。この施策は単なるごみ減量に留まらず、河川環境の保全、家計負担の軽減、そして「今ある価値を次へつなぐ」という新たな地域文化の形成を見据えた戦略的な一手です。

水郷の恵みを次世代へ引き継ぐため、蟹江町が挑む「リユース主導のサーキュラーエコノミー」の全貌を横江 淳一町長に伺いました。

プロフィール:横江 淳一(よこえ じゅんいち)
  • 平成7年5月に蟹江町議会議員初当選し。以後、連続3期当選し蟹江町の発展に尽力。平成17年4月に蟹江町長初当選し、現在6期目となる。
    蟹江町立学戸小学校PTA会長、蟹江町消防第5分団長、蟹江町体育指導委員(現 蟹江町スポーツ推進委員)、保護司などを歴任し、座右の銘は「有言実行」。
    ⇒蟹江町ホームページはこちら

「家の中から出せない」を解決。高齢者世帯の負担を減らすリユースの形

――蟹江町におけるごみ処理の現状と、今回「リユース」に本格的に舵を切られた背景についてお聞かせください。

蟹江町のごみの排出量は、全体として減少傾向にあり、これは町民の皆様のご理解とご協力の成果です。しかしながら、粗大ごみの排出量は近隣市町村と比較して多い傾向が見られ、課題であると捉えています。また、排出される粗大ごみの中には、まだ十分に使用可能な家具や生活用品が多く含まれているという現状を踏まえると、排出前の段階において、リユースにつなげる仕組みが必要であると考えていました。

その折、地域に根ざした情報発信力とマッチング機能を有する御社からリユースに関する業務提案を受けました。

御社が運営するプラットフォーム「おいくら」は、複数事業者による一括査定が可能な、品物を適正価格で再流通させる仕組みのため、町民の皆様が気軽に参加できる環境づくりにつながると判断しました。

 

――民間プラットフォームである「おいくら」との連携を決めた、一番の決め手は何だったのでしょうか?

一番の決め手は、大型品や重量のある不要品を自宅内から運び出すところまで対応していただける点です。

蟹江町では、粗大ごみは事前に電話や役場窓口で回収の申込みを行い、戸別収集にて行なっておりますが、粗大ごみの収集予約を受ける中で、特に高齢の方からは「家の中から出せない」、「一人では持てない」という声をよくいただきます。無理に動かそうとして転倒する危険もあり、安心して整理できる環境を整えることが大切だと感じていました。

さらに「おいくら」は、再販価値の高い物だけでなく、価値の低い物でも“誰かにとって必要な物”として、町民の皆様に負担をかけずに引渡すことができるプラットフォームです。こうした仕組みによって、生活の整理と同時に、ごみの削減や資源の有効利用にもつながります。

このような意味で、「おいくら」は蟹江町の取り組みをさらに前進させてくれる心強いパートナーであると考えています。 

 

豊かな河川を次世代へ。「捨てない仕組み」が守る水郷の美しさと誇り

――今回の連携を通じて、住民の皆様のリユース意識や行動にどのような変化(効果)を期待されていますか?

今回の連携を通じて、町民の皆様の「捨てるのはもったいないけれど、何がリユース品になるか分からない」、「整理や手間、時間がかかるのは避けたい」といった悩みを、気軽に解消できる環境が整うと考えています。

「おいくら」を利用すれば、大型品や重量のある不要品を自宅からそのまま引き渡せるうえ、査定やリユース可否も専門家に任せられるため、手間をかけずに安心して整理できます。

さらに、「売る」という選択肢を町民の皆様に提示することで、単に捨てるのではなく、価値を活かして誰かに役立ててもらえることを自然に実感できるようになります。その結果、「まずは査定してみる」という前向きな行動につながることを期待しています。

こうした小さな行動の積み重ねが、日常生活の中でのリユース意識の向上や資源の循環にもつながっていくと考えています。

 

――蟹江町は「水郷のまち」として豊かな自然を大切にされていますが、今回のリユース推進は「持続可能なまちづくり(サーキュラーエコノミー)」においてどのような役割を果たすとお考えですか?

(※)河川清掃の様子

かつて、伊勢湾近くの要衝の地として蟹江城が築かれた歴史ある蟹江町は、「川」によって栄え、独自の文化が育まれたまちです。豊かな河川環境は、町の誇りであり、次世代へ確実に引き継いでいく責任があります。

その一方で、河川美化活動を行っている団体の皆様が、年に2回、船で河川のごみの回収を行ってくださっていますが、その中には自転車や冷蔵庫といった大型の廃棄物も見受けられるのが現状です。

これは、環境への負荷という観点からも大きな課題であると認識しております。

だからこそ、リユースの推進は、単なるごみ減量施策ではなく、「捨てない仕組みをつくること」であり、サーキュラーエコノミーの実践そのものだと考えております。

不要になった物を廃棄する前に、必要とする人へつなぐ。この流れを町として後押しすることが、不法投棄の抑制や河川環境の保全につながると考えます。

資源を循環させる暮らしを当たり前にする。

その積み重ねが、持続可能なまちづくりにつながるものと考えております。

 

「今ある価値を活かす」ことが、家計と地域経済を支える新たな力に

――今後、リユースの促進だけでなく、ごみの発生抑制(リデュース)など、循環型社会の実現に向けた次なる一手や展望があれば教えてください。

今後は、粗大ごみを排出する際に、リユースや再資源化の可能性について町民の皆様のご意向を確認する仕組みづくりを検討しています。

廃棄する前に、再使用や再資源化の可能性を一度考える機会を設けることが、ごみの発生抑制につながると考えており、町民の皆様の選択を尊重しながら、資源をできる限り循環させる仕組みを段階的に整えてまいります。

 

――リユースの推進は、不要品の売買を通じた地域経済の循環にも寄与します。経済活性化と環境負荷低減を両立させるための、町長としてのビジョンをお聞かせください。

リユースの推進は、環境対策であると同時に、住民生活を支える取り組みでもあると考えています。

例えば、まだ使える家具や家電をリユースすることで、新たに購入する費用を抑えることができ、家計負担の軽減につながります。また、不要品を売却することで、新たな収入を得る機会にもなります。

物価上昇が続く中、こうした「暮らしの中の小さな経済循環」を広げていくことは、住民の安心感にもつながるものと考えております。

さらに、地域内の不要品が売買されれば、そのお金は地域の中で循環します。これは大きな開発に頼らない、足元からの地域活性化の一つの形です。

私は、環境と経済を別々に考えるのではなく、「今ある価値を活かすこと」が地域の持続可能性を高めると考えております。

リユースを通じて、家計にも、地域にも、そして環境にも優しい循環を広げてまいります。

 

川の流れのように、大切なものを次へ。町一丸で育むリユースの習慣

――最後に、リユースという新しい習慣を共に創っていく蟹江町民の皆様へ、町長からのメッセージをお願いいたします。

蟹江町の代名詞である「川」は、上流から下流へと大切なものを受け渡しながら流れていきます。

私は、リユースもそれと同じだと思っています。

自分には不要になったものでも、誰かにとっては大切なものかもしれない。その思いをつなぐことができるのが、リユースという新しい習慣です。

物を大切にすることは、人を大切にすることにつながります。そして、その積み重ねが、まちの未来を守る力になると信じています。

リユースは特別なことではありません。「まだ使えるかな」と一度立ち止まる、その小さな選択から始まります。

価値を長く、大切に使う時代への転換と、次の人へとつないでいく文化を、町民の皆様と共に育てていきたいと思います。

まとめ

蟹江町が取り組む「おいくら」との連携は、水郷のまちの豊かな自然を守りつつ、高齢化社会や物価騰といった現実的な課題に寄り添う、非常に血の通った施策だと感じました。

川の流れのように、不要になった「価値」を次へと受け渡していく。その習慣が不法投棄を防ぎ、地域経済や家計を潤すという町長のビジョンは、持続可能なまちづくりの理想的な姿です。官民が連携し「今あるものを大切にする文化」を育むこの挑戦は、多くの自治体の道標となることでしょう。